、何やってんの?」



「悟空、悟浄も。何やってんの?」



「そりゃ、こっちのセリフだって」



たまたま立ち寄った宿の裏。


夜の星空が街を少し照らす。



「ちょっと、空見ててさ」


「なんか美味しそうなもんある?!」


「あるわけねーだろ、ばかザル」


「んだとーっ!!」




あははは、と笑う私の声と
悟浄と悟空の口喧嘩する声が
静かな空間に響いた。



「こんな日々が、ずっと続くわけないんだよね?」



顔を引っ張り合っていた悟空と悟浄がぴたっと止まって私を見る。



「牛魔王蘇生実験を止めて、悪の根源をすべて消して

それから…私たちは?どうなるのかな?」




はぁーっと息を吐いて空を見る。



「いろいろなことが過去になって、それは夢みたいに薄らいで、忘れていく。

そして、過去は美化されて、あったこともなかったことも作り出していく。」



_____そして、あのことも




言葉を紡いで、悟空を見た。



「忘れてはいけなかったはずなことが、自然と忘れていて

思い出そうとしても、なんだったのだろうと思い出せなくて」





_____あの人の、顔が思い出せなくなる









「おいおい、チャン?」



「自分で、自分が嫌いになっていく」



悟空の顔を見たまま、少し涙をこぼしながらも微笑む




『悟空を、俺は殺してしまうのか?父上の命令といって』




、俺はどうすればいい?アイツを殺したくはない』





目を閉じて、忘れもしない時を思い出す。


それさえも美化されたものかもしれないと、心のそこで思ってしまう。



、どーしたんだ?体調が悪いんじゃ…」



「今日がね、知り合いたちの命日なの」




その言葉に、その場は静まり返る。


はっと我に返れば、自分は何を話しているのだろう

2人に話しても、わかるものではないのに。



「ごめんね、なんか暗い話しちゃったな。


悟浄、悟空、先に部屋入ってて。

ちょっと頭冷やしてくるついでに散歩してくるね」



その場を少し走って離れる。




、と2人が呼ぶ声が聞こえたが、今返事してしまうと


変なことを漏らしてしまいそうで怖かった。







「ナタクっ」




今、どうしていますか?


勧善音菩薩様の元を離れて、貴方の顔が少しぼやけてきて

貴方と過ごした日々が、薄らいでいって




「いやだ、いやっ」




忘れたくないのに、過去にしたくないのに

貴方との思い出が、過去の遺物となってしまうことが、怖くて。




早く会いたい。話したい。


もう一度、悟空とみんなで_____





「もう、一度っ」












君すらも遠い過去になってしまいそうで嫌なんだ





昔に戻れるなら

もう一度、もう一度


ナタクに会いたい、みんなに会いたい____