「クリスタル」
静かな丘で、私はポツリと零した。
さわさわと広がる緑が、心を落ち着かせた。
空に輝く光、それが何かを物語っていた。
「コスモス、カオス」
ぎゅっと、願うように手を組み、力をいれる。
みんな、自分との戦いをしている。
私はみんなの戦いを、ただただここで見守るしかない。
ふわふわと、記憶がぷつっと切れそうになる。
それは私が、ここにいることができる時間を意味する。
クリスタルを手に入れることが、彼らの使命。
でもそれが、クリスタルを手に入れることが、コスモスの命を削る原因であることもまた事実。
「」
「コスモス」
久々に私の前に現れたと思うと、酷く衰弱している。
「彼らに、は、クリスタルが必要なのです」
ニコっと女神のように微笑むコスモス。
返って私は、心配した。
「彼らの、支えになってください。」
頭を撫でられると、記憶が切れそうになる間隔が全く嘘のように無くなる。
私も助けようとしてくれているんだと思うと、涙が出てきそうになる。
「私達、神の争いのせいで、貴方まで巻き込んでしまって本当にごめんなさい」
そう悲しそうに言うと、コスモスはきえてしまった。
何も出来ない私は、何のために何をするためにここにいるのか分からない。
彼らを見、そして時が過ぎるのをただ感じるだけしか出来ない。
「」
そう私に声をかける、低い声。
「クラウド」
この狭間に来る前からずっと、戦いを共にしていたクラウド。
「約束は、守れた?」
そう微笑むと、「あぁ」と少し微笑み返してくれた。
「バッツ、喜んでたんじゃない?」
「さぁ?どうだろうな」
そんな彼を見ると、少しホッとする。
「おぉーいっ!ー!!」
ぶんぶん、と小さい身なりながらもその分大きく手を振ってくるジタン。
その隣に、バッツがいる。
「お帰り、ふたりとも」
「これ、何だと思う?」
とニコニコしながら手のひらに物を現せ、私に見せてくるジタン。
「クリスタルだね」
さらっと答える私に、「ちぇ、面白くねーの」とツンとするジタン。
わからないフリしてあげればよかったと思ったけど、こんなにクリスタルからコスモスの力が出ていては
深刻に考えざる終えなかった。
「なーにしてんっすか?」
「わぁっ!?」
私の顔の横から、顔がすっと出てくる。
「ティーダッ!!」
ぱしっと頭を叩くと「いったいっす!!」と頭を抱えるティーダ。
四方八方から、みんなが帰ってくる。
クリスタルの力が集まるほど、コスモスにあった力を感じる。
いきなり、混沌の闇に辺りが変わり、コスモスとカオスが話をしている。
「だめ、コスモス」
分かっていた、ハズだった。
コスモスが何をしようとしていたのかも、この戦いが本当の終わりになることも_______
みんなも口々にコスモスの名を呼ぶ。
でも、コスモスは消えてしまった。
全ては混沌の渦に巻き込まれてしまった。
「本当の、闇」
コスモスが最後に言った言葉。
それを見つけるために、コスモスは消える運命を辿るというの?
そして私達は、コスモスの力を糧に生きていくというの?
理不尽すぎる、あまりにも。
「うおっ!?」
「えっ?」
きらきらと光る。
みんな、それが何なのかわからず、ただ自分の身体が光り
消えることなくとどまっていることを実感する。
それは私も同様。
違うのは、この光りがコスモスが削った力の一部だと知っていること。
だから、素直には喜ぶことは出来ない。
「何かあったのか?」
クラウドがそう私に話しかけてくる。
言ってしまうべきなのか、彼らにことの重大さを知ってもらうために。
そしてこの力も、長くは持たないことを。
不安にさせて、焦らせる、それですぐに全てが解決すれば良いが
それは出来ないだろう。
なら、私は見守るべきだ。
みんなが笑っていられるように、たとえ全てを知っていたとしても。
意志を強く持って、彼らを支えなければ。
それがコスモスが私に託したことだから。
「ありがとう、クラウド。大丈夫、大丈夫だから」
そうか、と頭をくしゃっと撫でて、離れていくクラウド。
これから、どうするべきなのか、ウォーリアを中心に話が出る。
「よく、聞いてほしいことがあるの」
その輪の中に私も参戦した。
「私達がここで、こうやっていられるのも少ししかない。
なんでいられるのかはわからないけど、まだ私達はここにいることができる。
だから、ここにいて、何か行動ができて、混沌を変えることが出来るかもしれないという希望を持って
お願い、この世界を救って.....」
懇願するように、私は言った。
みんなの目を見て、みんなの真剣な眼差しを見て、安心した。
大丈夫、彼らなら絶対、終わらせてくれる。
だから、大丈夫。
そう強く心に持った。
「あぁ」
「まかせとけって!!」
口々に私の言葉に応答する言葉が発せられる。
みんなの決意を胸に刻みながら
私は10人の戦士の背中を見送った。
夜明け前の僅かな時間に
前を見る。
そして、未来を切り開いていく。
クリスタルの力がある限り。