遠くから、いつも羨ましく思っていた。
近くで彼を見れる、隊員や形振り構わず近づける女の人たち。
『付き合ってくれ』
隊も違う、地位も、人を寄せ付ける魅力さえも。
なのに、彼から告白された。
何にも劣っている、私を。
泣き喜んだことが懐かしいと思う、今日この頃。
あの頃の自分はどこに行ったのだろう。
浅ましい思いを募らせるばかり。
もう少し、寛大な心を持てたら良いのに。
彼が好きなら、周りのすべてに負けない力を持つべきなのに。
その力を習得する、術を知らない私は身動きがとれずにいた。
「修へ、」
あ、っと前方に彼が見えた瞬間、私は少し声を張り上げて彼を呼ぼうとする。
「檜佐木副隊長〜!!」
「お、遅ぇじゃねぇか-」
「ごめんごめん」
じゃれあっている、修兵と同じ隊の隊員の女の人。
私より、スタイルは良くて可愛らしい。
腕につけている紋章を見れば、六席と十五席の私より位が高い。
はたから見れば、付き合っていてもおかしくない。
「さんwお話しましょww」
どうして、こんな目に遭うのだろうか?
私はただ、彼を好きになって、付き合っているだけで
彼からも、周りからも見放されている感じ。
「早く別れたほうが身のためじゃないかな?あははは」
耳に残る、高笑いの声。
聞きたくなくて、耳をふさいでも、その声はふさいだ隙間を見つけては進入してくる。
それでも、離れたくなかった。
彼の女好き、っていうのは付き合う前から知っていたし
耐えられると思っていた。
それでも、欲が出てしまうと、嫉妬は募るばかり。
「-!!」
笑顔で私を呼ぶ彼。
「修兵」
できるなら今、会いたくなかった。
彼を拒絶してしまうから。
すべてを受け入れるつもりでいたのに、こんな汚い気持ちばかりを募らせてしまっている。
「もう終わりだろ?帰ろうぜ」
彼の笑顔を憎ましく思う。
頭の中がぐちゃぐちゃで、この問題をどうしたら解決できるのかなんてわからなくて。
「行くぞ」
と手を触られた瞬間、ぱしっと手を払ってしまった。
「?」
心の中ではやめろと頭に警告していたのに、逆らえなかった。
「私、修兵のこと、もう解らないよっ」
「おい、っ」
呼ばないで、愛を錯覚してしまいそうになる。
私はまだ、愛されていると。
違う、それは違う。
彼は私のものであるというのは建前で、本当は全然違う人のもの。
猫のように、ふらふらと気に入ったところを見つけては、そこに居座って
都合のいいときだけ、帰ってくる。
修兵、わかってあげられなくて
心が広くなくて、ごめんなさい。
触らないで、私を呼ばないで
私はもう、一緒にいてあげることはできないから_________